冷燻とは?
冷燻(れいくん)とは、燻製の手法の一種です。
一般的な燻製の調理温度は約60度以上ですが、冷燻は、約30度に満たない温度で食材を燻します。
その結果、食材の魅力が熱により損なわれること無く、食材の潜在力を引き上げる事ができ、食の世界の可能性をさらに広げる事ができる調理法の一つと考えています。
風の仕業では、くまさん開発のオリジナル燻製器(特許取得)使用しています。
温度の低い煙は、素材に " 熱 " というストレスを与えません。
食材のポテンシャルを最大限に引き出し、本来の味がより際立ち、旨みが凝縮したように感じられます。
冷燻は、燻製の香りや、味を付けることを目的としていません。
あくまでも、食材を引き立てる" 名脇役 "です。
冷燻とくま
今から50数年も前のことです。コーヒー好きだった私は、その頃コーヒーに関する書籍を読み漁っていました。
ある日、コーヒーの雑誌の中に「紅茶の葉っぱで豚肉を燻すと“ベーコン”が出来る」という記述を見つけ、えらく興奮して早速トライしましたが、案の定大失敗。塩をすることも、寝かせることも、干すこともせずにただただ書いてある通りにやっただけでしたので、当たり前の結果です。しかし、書いてある通りにやったのにひどく不味い物しか出来なかったことに納得出来ず、「旨いベーコンが作りたい」スイッチが入ってしまい、結局この大失敗が私の「燻製人生」を決定してしまったのでした。
その後いくつかの大失敗の末に、「冷燻」と出会うことになり、出会った「冷燻」は、実は素晴らしい料理法だったのです。焼く、煮る、炒める、蒸す、などと同じ料理の手法としてとても有効な手段だったのです。素材の特徴、美味しさ、香り、旨みの全てを損なうこと無く燻香をプラスして、尚且つ新しい美味しさまでも登場させる力を持っていたのでした。
かくして冷燻にすっかり魅了されてしまった私は、身近な食べられる物全てを冷燻にしてみたいという、とんでもない膨大な夢に取り憑かれてしまったのです。
時は流れ、その夢の無謀さに気付き、途方に暮れていた時のことでした、今まさに燻製をしようとしている燻製器の中に、隙間空間があるのを、残念でもったいなく思った私は、ふと目についた「塩」にその隙間を埋めるための役割を持たせてしまったのです。
ほぼ8時間が過ぎ、出来上がった塩の燻製を味見した時、予想を超えるとんでもない物が生まれてしまっていたことに愕然としたのです。そう、まさに新しい世界が誕生していたのです。今までに経験したことのない美味しさに、驚き感動し興奮が一気に頭の中で大爆発していたのでした。その時から3日間くらいのことをあまりよく覚えていないのです。とにかく調味料と呼べる物は全て燻製にしてみようと、時間も忘れ次から次へと燻製機に放り込んで、「いいぞいいぞ」とニヤニヤしながら、寝るのも忘れて、ご飯は食べて、気がついたら3日経っていました。
こうして「燻製の調味料」は生まれたのです。
その後、生まれて来た燻製の調味料を使って、自分の“美味しい”を信じて、お越しいただいたお客様に喜んで頂きたいと思い、全てのエネルギーと、時間と、やってきた全てを集中して、赤坂の地で「燻」という、途方もなく破天荒な店をやらせていただいて来ました。
30年あまり作り続けてきた自分ならではの料理と、他に類を見ない冷燻の技法をなんらかの形で次世代に継承して行きたいと願うようになり、冷燻商品の製造販売をする『風の仕業』を再出発させ、そして『 一般社団法人 日本冷燻協会 』を立ち上げました。今後はたくさんの人に冷燻の素晴らしさと美味しさを知って頂きたいと願っています。
誰かの為に、手間がかかって面倒臭くて難しいことを楽しく一生懸命やることの素晴らしさを伝えたいです。